言語学主専攻について

人文学類の言語学主専攻は、人間の言語に関する研究全般を扱う主専攻で、言語の研究に関心のある学生を広く受け入れています。
一般言語学コース(中国語学、仏語学、独語学、露語学を含む)、応用言語学コース、日本語学コース、英語学コースを置いています。

言語学が取り組むテーマとは

鳥が空を飛ぶように、魚が海を泳ぐように、人は言語を使います。言語能力は人間が生まれながらに備えた本能の一つであると言ってもよいでしょう。人間とは何かを探求する人文学類に、言語学主専攻が設置されている理由がここにあります。

では一体どのくらいの数の言語があるのでしょうか。数え方にもよりますが、世界には7千を超える言語が存在するといわれています。その中には、英語や中国語のように莫大な使用人口を擁する言語もあれば、絶滅の危機に瀕している言語もあります。それら一つひとつが特別な個性を持ちつつ、同時にまたどの言語にも共通する性質を備えています。
言語には個別性と一般性の両面があるのです。その二面性を解明することは、言語学が取り組む重要なテーマの一つとなっています。

言語は難しいという声をよく聞きます。確かに発音や文法のルールは複雑で厄介ですし、好まれる言い回しも言語ごとに異なります。
しかし、私たちが生きているこの世界はもっと複雑で、多様性に満ち溢れているのではないでしょうか。現実世界の厄介さは言語のそれとは比べ物になりません。私たちは言語を用いて複雑な現実世界を捉え、考え、時に思いを伝えているのです。言語が異なれば捉え方も異なり、考え方や伝え方も異なります。これも言語学が取り組む研究テーマの一つです。

教授[中国語学]佐々木 勲人

About the Linguistics Major

In the Linguistics Major, students learn about various aspects of human language.
This major consits of courses in General Linguistics, which includes studies of the Chinese, French, German, and Russian languages, Applied Linguistics, Japanese Language Studies, and English Linguistics.

Language Study and Linguistics

When people hear that I specialize in Linguistics, they often ask, “How many languages do you speak?” In regard to this, I would have to agree with Ryu Murakami, who said, “The two are often confused, but linguistics and language study are completely different things” (“Hello Work at Age 13“, Gentosha). To use cars as an analogy, a language study expert is a racer who drives in a cool way, whereas a linguist is like an engineer who studies aerodynamics and engine performance to develop faster racing cars. Engineers and racers have different talents, and it is possible for someone who cannot drive well to be an excellent engineer.
As far as learning is concerned, studying a language is language learning, while researching a language is linguistics. Language learning is based on the premise that the grammar is already understood, and learners memorize the grammar written in textbooks. This is called prescriptive grammar. In contrast, researching a language is based on the premise that the grammar contains much that is not understood, and involves discovering and describing grammar based on linguistic data. This is called descriptive grammar.
Linguistics begins when the way we relate to language is transformed from prescriptive to descriptive. Many discoveries on language await us as we rediscover what we thought we knew about Japanese or English. This allows us to decipher languages we encounter for the first time, examine the nature of language itself that goes beyond individual tongues. The uses of these discoveries in society and education is becoming more widespread.

Professor of Semitic Languages Jun Ikeda

言語学主専攻の各コース

  • 応用言語学コース 応用言語学コース 個人と社会のレベルで、言語にかかわる諸問題を多角的・実際的に解決することを目的とする学問です。文章論、社会言語学、教育言語学など、他の研究領域と連結しながら研究することを志向しているほか、英語教育学を専門とすることもできます。
  • 一般言語学コース 一般言語学コース 様々な言語を通して、言語の多様性と普遍性を探求します。
  • 日本語学コース 日本語学コース 日本語の特徴について、音韻・表記・文法・意味・語彙・歴史など多方面から学び、日本語を分析する力を養います。
  • 英語学コース 英語学コース 英語学コースでは、言語を通して人間精神に迫る言語学の観点から、英語という言葉の背後にある様々な仕組みを学び、考察します。

所属教員紹介

教員名 職階 担当コース 研究テーマ
宮川 創 宮川 創 So Miyagawa 准教授 一般言語学コース 古代エジプト語史・コプト語、歴史言語学、言語類型論、自然言語処理
歴史言語学および言語類型論の知見を軸に、文献の精読に基づくコーパス構築と自然言語処理ツールを用いたコーパス分析を通して、言語の歴史を解明します。
池田 潤 池田 潤 Jun Ikeda 教授 一般言語学コース セム系言語の歴史研究と現地調査
私は人文学類で言語学とセム系言語に出会いました。以来、言語を通して人間とは何なのか考え続けています。
橋本 修 橋本 修 Osamu Hashimoto 教授 日本語学コース 現代日本語・古代日本語の文法(意味論)
脳内現象としても、社会現象としても極めて興味深い存在である日本語を、多方面からつつき回しましょう。
島田 雅晴 島田 雅晴 Masaharu Shimada 教授 英語学コース 理論言語学
日常意識することがない、自然に身近に存在する物事に何か一つこだわってください。それが研究です。
大矢 俊明 大矢 俊明 Toshiaki Oya 教授 一般言語学コース ドイツ語・英語・日本語の対照研究
外国語を楽しく,また考えながら勉強しましょう。じっくり考えることで,複合的な視点が生まれてきます。
臼山 利信 臼山 利信 Toshinobu Usuyama 教授 一般言語学コース 露語学、言語政策論
ロシア語の美しい響き、精緻な体系を持つ文法、ロシア語が話される中央ユーラシア独特の文化世界。魅力満載です。
和田 尚明 和田 尚明 Naoaki Wada 教授 英語学コース 時制・アスペクト・モダリティ
英語という言語の本質を知りたい人にはぜひ学んでほしいと思います。
佐々木 勲人 佐々木 勲人 Yoshihito Sasaki 教授 一般言語学コース 中国語文法研究、日中対照研究
ことばの分析を通して中国人のものの見方や考え方の特徴を明らかにしています。
那須 昭夫 那須 昭夫 Akio Nasu 教授 日本語学コース 音声学・音韻論
日本語の音声・音韻、とくにアクセントなどの韻律現象について研究しています。「音の文法」の解明に取り組む魅力を学んでほしいと思います。
宮腰 幸一 宮腰 幸一 Koichi Miyakoshi 准教授 英語学コース 理論言語学
表面的な言語現象の背後にある法則を科学的に解明する楽しさを学んでほしいと思います。
金谷 優 金谷 優 Masaru Kanetani 准教授 英語学コース 英語学、構文文法、語用論
ことばは「人の心をのぞく窓」とよく言われます。人間の認知の仕組みとことばの関係を考えていきましょう。
和氣 愛仁 和氣 愛仁 Toshihito WAKI 准教授 日本語学コース 現代日本語文法、人文情報学
文系・理系という単純な二分法はすでに過去のものになりつつあります。両者を橋渡しするために何が必要か、一緒に考えてみましょう。
住大 恭康 住大 恭康 Yasunori Sumidai 准教授 一般言語学コース 現代ドイツ語の意味論・語用論
何が、言語表現の正しさ、適切さを左右するのか?ドイツ語を手がかりにその答えを探してみましょう。
黄 賢暻 黄 賢暻 HYUN KYUNG HWANG 准教授 一般言語学コース 音声学、日韓対照研究
日本語と韓国語で子音母音の音声やイントネーションがどういうふうに現れ、人々の知覚にどのような影響を及ぼすかを研究しています。
山村 崇斗 山村 崇斗 Shuto Yamamura 助教 英語学コース 生成統語論、文法変化
今の英語を他言語や昔の英語と比較すると見えてくる類似点や相違点を、生成統語論の枠組みで分析します。
菅野 倫匡 菅野 倫匡 Michimasa Kanno 助教 日本語学コース 文字・表記論、計量語彙論
日本語の文字・表記や語彙について研究しています。言葉を数えることによって見えてくる面白さや難しさを体験してみませんか。
矢澤 翔 矢澤 翔 Kakeru Yazawa 助教 英語学コース 音声学・音韻論・第二言語習得
普通教育ではあまり学ぶ機会のない英語の音のしくみについて、ぜひ学んでみませんか。
菊池 そのみ 菊池 そのみ Sonomi Kikuchi 助教 日本語学コース 日本語の文法史・語彙史
言語資料を読むと、皆さんが使っている言葉との共通点・相違点が見えてくるはずです。そこから日本語の歴史を辿ってみましょう。